一九世紀、体で感じる苦痛は目で見る喜びに等しかった。スカートの広がり、かつらのうずたかさ、コルセットのきつさ、ヒールの高さ。それらが極端になればなるほど、着用者がファッショナブルな上流階級の人間であることを知らしめる合図となったのである。一九世紀も後半になると、日常生活において以前よりも積極的に体を動かす女性が増え、スポーツも嗜まれるようになった。だが、これは当時のファッションではとてもやりにくいものだった。そこで、女性がスケートをしていて転倒したり、自転車から転げ落ちたりする危険をこれ以上増やさないようにと、〈合理服〉運動の推進者たちがより実用的なスタイルを求めて戦い始めたのである。合理服支持者のエレン・グールド・ホワイトは、一八六八年にこう記している。「循環が悪ければ血液は汚れ、脳や肺で鬱血が起こって頭や心臓、肝臓、肺の病気の原因となる。ファッショナブルな婦人服のスタイルは、こうした恐ろしい病気の一大要因である」。歴史的に、ファッションはさまざまな体調不良の原因とされてきた。なかでもひときわ悪者呼ばわりされているのがコルセットである。