「どうしてよりによって自分かこのようになってしまったんだろう」と、運命に思いをはせているのかもしれません。「自分がしてきたことの中で、何かが悪かったんだろうか」と、後悔の気持ちがあるのかもしれません。あるいは、遺伝を気にしているのかもしれません。または、「治りますか」という問いの変形かもしれません。医師は、それを見極めた上で、誠実に答える必要があります。もし、原因と言えるレベルの事柄がはっきりしている病気なら、それを答えればよいでしょう。しかし、実際には、原因は不明であるというのが最も誠実な答えであるような病気がほとんどなのです。だから、このような答え方が多くなります。もともと、患者さんからこの問いが発せられる場合、原因を知りたいという知的興味からではまずありません。なんらかの代理表現ととらえるべきです。ですから、この問いと答えのあとが大事だと思います。「そうですか」と収めてしまうなら、そのまま静かにやりとりを終えればいいでしょう。しかし、もしすっきりしない様子であれば、私の方から「何か気になることがあるんですか」と尋ねるかもしれません。「かもしれません」というのは、時と場合により、深入りしない方がよい場合もあるからです。もし聞けば、おそらく、患者にとっての真の関心事についての会話に入っていくことになるでしょう。